工業会活動報告

展示会講演会 参加・見学報告

第80回応用物理学会秋季学術講演会 参加報告

目的: ガラスに関する講演を受講し、ガラス業界の最新の技術情報を調査した。
内容:
1.講演会の概要
今回の講演は、口頭・ポスター合わせて4,234件の発表があった。その中でガラス関係の発表は62件あった。
ガラス関係の発表で興味を引いたいくつかの講演内容を報告する。

Sn2+,Cu+添加バリウムホウ酸塩ガラスの発光特性(阿南高専)
この系においては、260nmの励起光で青白の発光帯があり、340nmの歴ではオレンジ色の発光帯(650nm付近)を持つことが報告されている。 この系はまたB2O3を母相としたBaO・B2O3層のバイノーダル分相が起こりSn2+やCu+は球形に分離したドロップレットに集積されるので、 発光が確認されれば、この現象を利用した微小球光デバイスなどの機能性の付加が可能になる。

Cu含有シリカガラスにおけるラジオフォトルミネッセンスのCu濃度と熱処理による影響(京工繊大)
シリカガラスにCuを含有させるには、溶融シリカガラスにCuを添加する方法があるが、溶融温度が非常に高くなるので実用化に乏しい。そこで、ホウケイ酸ガラスを作成し、スピノーダル分相により生成したホウ酸アルカリ層を酸で溶出すると、シリカ骨格の多孔体が残る。それを硫酸銅水溶液に浸漬した後、焼成して、Cuを分散したシリカガラスを得た。得られたガラスはCuのラジオフォトルミネッセンスを示したが、それのCu濃度と熱処理による影響を調べた。

ビスマス含有酸化物ガラスの2光子吸収係数(愛媛大理工)
Bi2O3を含有する酸化物ガラスは低光弾性と高屈折率が特徴で、ホウ酸系ガラス組成では非線形光学応答特性を持つことが知られている。 実験で得られたBiを高濃度含有するBi2O3-B2O3ガラスは光高弾性がゼロで複屈折率現象も持たず、 また、550℃で線引きができることから、光ファイバー形状の光スイッチ等の非線形光学素子の実用化の期待がもたれた。

アルカリ/アルカリ土類-アルミノリン酸塩ガラスの高温粘弾性(産総研)
非球面や回折光学素子、モスアイ形状などの光学素子の製造では金型による成型方法が用いられる。しかしながら、金型の形状がそのままガラスに転写できるかというと、うまくいかないことが多い。そこで、アルミノリン酸塩ガラスにアルカリやアルカリ土類の種類と含有量を変えたものを加え、ガラス転移温度付近における粘弾性特性を調べた。結果から構造緩和の活性化エネルギーを算出すると、アルカリは含有量が少なくなると活性化エネルギーは増加するが、アルカリ土類については逆の現象が起きることが判った。

化学強化ガラスにおける残留応力と短距離構造の関係(東北大院工)
化学強化ガラスの強化量とその仕組みの関係については、イオン交換で置換されたアルカリイオンの充填量やその到達深さで示す場合が多く、ガラス構造について調べた例は少なかった。そこで、T-O-T(T:Al or Si)結合の力定数と結合角を測定し、残留圧縮応力との関係を調べた。

感想
2年前の発表と比べると、酸化物ガラス関連の発表が増えた。また、光機能性デバイスや精密光学素子の開発につながる研究が、大学や公的研究機関で数多くなされていることが判った。将来のガラス産業に繋がる研究に期待がもてると感じた。

以上。

開催日程 2019年9月18日~21日
参加人数 1名
場所 北海道大学 札幌キャンパス