2019年度 光技術動向・光産業動向セミナー 視察報告
2019年4月26日
概要:OPIE’19(OPTICS & PHOTONICS International Exhibition)は毎年横浜で開催される光とレーザに関する展示会ですが、今年は光技術動向・光産業動向セミナーが併設されたので、ガラスが多く使われる光産業の情報を得るために参加しました。
○光産業全体の最新動向
光産業国内企業の全出荷金額の推移は以下の通り。
2017年度:14兆451億円(成長率+0.8%)
2018年度(見込):13兆6,348億円(成長率-2.9%)
2019年度(予測):2018年度と同等
内訳をみると、レーザ・光加工分野は10%以上の伸びがあり、センシング・計測分野も5%前後の伸びが継続されているが、太陽光発電、情報記録、情報通信の分野では毎年減少している。
また、上記のうち、国内生産額は以下の通り
2017年度:7兆3,895億円(成長率-6.1%)
2018年度(見込):7兆970億円(成長率-4%)
こちらの内訳もレーザ・光加工、センシング・計測分野が好調で、情報記録、入出力、ディスプレイ、太陽光発電の各分野がマイナスである。
○レーザ・光加工分野について
光産業全体において、ここ数年毎年10%程度の成長を続けているのはレーザ・光加工(応用)分野だけである。この分野は具体的には、レーザ加工(炭酸ガスレーザ、固体レーザ、エキシマレーザ、ファイバレーザ、半導体レーザ)、ランプ・LD露光装置、3Dプリンティングが挙げられる。 全出荷額7,300億円の内、ランプ・LD露光装置が54%を占め、次にエキシマレーザが24%、ファイバレーザが9%、炭酸ガスレーザが7%、固体レーザが6%と続く。国内生産比率が高いことが特徴で95%程度ある。 レーザ加工の動向をみると、エキシマレーザはリソグラフィー装置の需要が多い。
ファイバレーザは切断加工装置の70%を占め、今後さらに増えるとみられる。また、溶接では固体レーザ(YAG)からの置き換えが増え、レーザクリーニング用途でも今後需要の伸びが期待されている。
炭酸ガスレーザはプリント基板の穴あけでは独占だが、切断ではガラスや特定の樹脂にのみ使われている。
固体レーザは微細な加工用途で需要が伸びている。
○センシング・計測分野について
2018年の全出荷額は2,300億円。国内生産比率は83%。
光産業全体に占める出荷額割合はまだ小さいが、近年IoTや自動運転の普及や期待により、潜在的な規模は大きいと見られている。
また、5Gの実用化で情報通信が爆発的拡大するとみられる中で、センシング・計測分野の需要も拡大するとみられる。よって、確実に経済成長が見込まれる分野と言える。
○太陽光発電分野
太陽光発電は世界的に見て2010年代の国の普及施策が主導した時代から、2020年代は市場が主導する段階に到達しようとしている。これは年間の導入量が2018年は100GWに到達し、2019年は確実に100GWを超えることからも言える。
2018年の年間導入量のトップ4は、中国(44GW)米国(11GW)インド(8GW)日本(7GW)で、近年はこの4国で7割を占めている。
主要なモジュール供給メーカーはほぼ中国勢が占めている。
2018年の日本企業の全出荷額は2兆2,300億円。日本では2013年に固定価格買取制度(FIT)がスタートし導入が飛躍的に伸びたが、その後、買取価格の低減で市場が急速に縮小した。今後も買取価格の動向に影響されるとみられている。
○ディスプレイ・固体照明分野
2018年の全出荷額は5.5兆円と、光産業の分野別では最大でここ2年は横ばい。その内国内生産額は2.7兆円で、これも分野別では最大である。国内生産依存度はほぼ50%で、光産業全体と同じ比率である。この分野は殆どが家電製品になるので、景気や社会情勢の影響が強く反映される。 この分野の出荷額のおよそ半分がフラットパネルディスプレイ、そしてその大半を占めるテレビは殆どが海外生産であるが、車載は要求性能が厳しいので、国内生産が多い。
○入出力分野
この分野は光学式プリンタや複合機、デジタルカメラ、スマホ、タブレット、監視カメラ・車載カメラ、イメージセンサなどが対象となる。
国内生産比率は30%程度と低い。この分野の国内メーカーの全出荷額は3.5兆円。2018年は-5.4%。
光学式プリンタ・複合機の全出荷額は7,000億円、国内生産比率は8%程度。デジタルカメラの全出荷額も7,000億円で国内生産比率が23%。デジタルカメラは2017年度が前年の熊本地震の反動で増えたが2018年度は減少した。イメージセンサは年々増加しており、2018年は9,000億円で伸び率は8%。内国内生産比率は58%あるが、昨年の75%から大きく減少した。これはスマホのカメラ多眼化の影響で2017年から全出荷額が増加したが、2018年はiPhoneとデジタルカメラの減退により国内生産が減った為である。
○情報記録分野
この分野は光ディスク装置(CD,DVD,BD)とその媒体になる。
2018年の光ディスク装置は全出荷額が6,778億円であるが年間約5%の減少を続けている。国内生産比率は17%で、2016年→2017年で26%から大きく減少した。
光ディスク媒体は2018年の全出荷額が429億円で前年比7%の成長。国内生産比率は26%で、こちらは横ばい傾向ながら業務用追記型メディアが堅調な伸びで今後が期待されている。
○情報通信分野
この分野の全出荷額は5,134億円で前年日+2.2%。国内生産比率は81%で、この国内比率は年々下がっているが、全出荷額は概ね安定に推移している。
出荷額の内訳は、光伝送機器・装置は1,300億円、光部品類が2,040億円、光ファイバ類が1,640億円となるが、光伝送機器・装置が国内向けであるのに対し、光部品と光ファイバは海外向けにシェアをもっている。海外では需要が旺盛なので、在庫調整が済めば持ち直すと思われる。
以上。