工業会活動報告

展示会講演会 参加・見学報告

技術研修会〈ガラス溶融技術〉 参加報告

視察先(主催):日本硝子製品工業会
調査目的:ガラス溶融技術に関する情報の収集のため。

内容:
ガラスの溶融技術に関する技術研修会に参加した。
研修会では下記の講演を聞いた。

①「次世代酸素燃焼(Heat Oxy Combustion)」
日本エア・リキード株式会社工業事業本部素材産業部(燃焼)
木村 誓史 氏

②「ガラス分野における大阪ガスの取り組み」
大阪ガス株式会社産業熱開発チーム燃焼技術グループ
柳樂 愼輔 氏

③「ガラスのバッチ反応・清澄の基礎」
東京工業大学教授
矢野 哲二 氏

詳細:
今回参加した3題目の講演について報告する。
①「次世代酸素燃焼(Heat Oxy Combustion)」
ガラス炉における熱損失の大部分は排ガスによるものである。空気燃焼だと空気の78%は窒素であり燃焼には関与せず、熱を吸収して排ガスとして出ていくだけであるが、 酸素燃焼に転換すれば排ガスの量を減らし熱効率を上げることができる。 日本エア・リキードは酸素の製造、酸素燃焼技術の開発、転換前後のガラス炉のモデリング・シミュレーション、燃料ガスおよび酸素の予熱技術などを用いて酸素燃焼転換をあらゆる面でサポートしている。

②「ガラス分野における大阪ガスの取り組み」
液体燃料と比べると都市ガスといった気体燃料は燃焼効率が高く、完全燃焼を得られやすいなどの利点がある。 しかしガラス炉の都市ガスへの燃料転換は輝度の低さに起因する輻射熱の低下や、高い火炎温度によるNOx濃度の上昇などを招く。 大阪ガスはこれらの問題をタンク炉、るつぼ炉に対応する自社製ガスバーナー、炉のエンジニアリング、シミュレーション技術などによって解決している。

③「ガラスのバッチ反応・清澄の基礎」
ガラスの原料であるバッチは1000℃前後の高温でガラス溶液へと化学変化する。 1000℃前後の高温ではどのような化学反応が起こっているかを観察することが難しかったが、ラマン分光法を用いたスペクトル解析により化学反応を推定、確定することが可能となった。 またX線解析を用いることによって、高温状態におけるバッチ中の気泡の生成・成長によるマクロ構造の変化、気泡の閉じ込めを把握した。 最後にガラス溶液中の気泡の消失(泡じめ)のメカニズムを気泡を含むガラス融液の観察動画、気泡内ガス種の解析によって把握した。

所感:
ガラス溶融という多量のエネルギーを扱うガラス炉における酸素燃焼ならびに都市ガスの利用や研究は、エネルギー効率の観点からこれからさらに進んでいくのだろうと思った。 そして通常の固体とは物質の構造・ふるまいが異なるガラス溶融の各種解析結果は大変興味深いものであった。この技術研修会は大変有意義であり、研修内容を是非とも日々の業務に活かしたいと感じた。

開催日程 2018年5月15日
参加人数 1名
場所 日本ガラス工業センター